医療崩壊と医師の働き方を考える

今本当に「医療崩壊」しているのか

「医療崩壊」という言葉は、医療の現場から最初に発せられたそうです。2008年7月に千葉県の銚子市立総合病院が医師不足により閉鎖に追い込まれた事件が報道されると、その年には「医療崩壊」に関するマスコミ報道が過熱し、「医師や看護師の現場での疲弊」や「救急患者のたらい回し」などが取り沙汰されました。

一方、2012年4月、内閣府が実施した「社会意識に関する世論調査」の結果によると、現在、よい方向に向かっていると思われる分野に「医療・福祉」を挙げた人の割合は22.5%で、前年比微増、悪い方向に向かっているとする割合は21.2%で、「良い方向」の割合が「悪い方向」を06年以来、6年ぶりに上回りました。

「医療崩壊」の現象がある程度「下げ止まっている」ということは言えるのかもしれません。しかし、問題が解消したわけではないのです。これからさらにかかってくる「高齢化」の圧力のもとで、医療現場にはさらなる大激震が走り、変革を余儀なくされていくことでしょう。

「医療崩壊」というセンセーショナルな呼び方で、医療をひとくくりに悲観視するのは賢明とは言えません。医療現場の当事者は、ひとつひとつの小さな課題を解決しながら、よりよい解決策を見出していく、その積み重ねをしていくしかありません。一方で厚生労働省の医療政策に対しては、的確な声を上げていく必要もあるでしょう。

現場医師の役割とは

このような大変な時代に努めを果たす医師に対しては、医療技術だけではなく多くの役割が求められています。病院という職場に不満があったら転職する、あるいは開業医を目指す、などでなんとか自分は勝ち組に残ろうというだけでなく、職場環境の改善や診療効率の向上に関与していくことや、医師同士の横のネットワークを作って現場の声を明確に発信していくことなどです。日本の医療環境の向上がなくては、医師の思い描くキャリアプランも実現できません。「医療崩壊」の現実にも積極的に目を向け、視野を広げてみることが必要です。
医療環境の整備は、行政や医師会だけが動いても立ち行かなくなってきています。医療現場の医師や病院経営者、地方自治体の首長などが地域に根ざした医療の体制を整えながら、中央の行政にも発言していくことが望まれます。
プロフィール
野口 愛美
香川県出身。某医学部卒業後、大学病院勤務を経て開業しました。医療と経営の融合の実現・互いに支え合える診療ネットワークづくりをモットーに一人でも多くの方に安心で充実した医療サービスを提供することを目指し、日々活動しています。
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